序文

 ものに溢れ急速にそれを消費し、産業が複雑化している現代において、ものそれ自体への意識は希薄化しています。ファッションとしてものを所有し、廃棄し続けながら過剰にバーチャルを賞賛する現代社会の中でも、私たちの生活の基本を支えるものを創造する過程、創造するための空間──工房のなかで交わされる人と道具との間には親密で、真摯な対話が行われています。消費する人々からはこの対話は秘匿され、疎外されてきました。この対話の姿を記録し、公開可能にすることはものを駆使する人類について、その在り方を再考する機会を与えてくれるのではないか。
 この展覧会は、3Dスキャン・モーションキャプチャといったデジタイズ技術を使用して、工房の中で製作される過程のアーカイブを公開するために企画されました。
 工房の中で行われる人とものの対話は職人と道具という関係において、手仕事として数々の記録がなされてきました。一方でその道具の配置される、扱われる工房と人との関係も含めて記録される試みはなく、この人と道具と工房の関係を再生できるメディアとして “表現力豊かな《工房》の模型” を制作しました。この他に、より豊かなアーカイブを構築するため、記録の過程における採集物とともに集録し、Online Exhibition「表現力豊かな《工房》の模型──あるいはポイエーシスの百科全書」を開催いたします。

開催概要

Online Exhibition
表現力豊かな《工房》の模型 ──あるいは、ポイエーシスの百科全書
An Expressive Models of “Atelier” — or, an Encyclopedia of Poíēsis

  • 会期:2024.8.1-2025.3.31
    (アーカイブプラットフォームとして公開期間を延長する場合があります)
  • 会場:www.atelierology.jp
  • 主催:戸石あき (lemna)
  • 支援:令和5年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業
  • 協力:
    東京藝術大学 ガラス造形研究室
    多摩美術大学 工芸学科 ガラスプログラム
    東京藝術大学 美術学部 建築科 金田充弘研究室
  • 吹きガラス製作:地村洋平*1、後藤夏希*1、馬越 寿*2
  • 3D+モーションデータ撮影:戸石晃史
  • 映像記録撮影:田中くるみ
  • 撮影協力:秋田亮平*1、川田諒一、土本亜祐美
  • Unity制作:高見澤峻介
  • 展示企画協力:原 千夏
  • Webデザイン+制作:柳川智之
  • グラフィックデザイン:柳川智之
  • 広報印刷:EP印刷
  • お問合わせ:exhibition.lemna@gmail.com

*1 東京藝術大学
*2 多摩美術大学

著者略歴

戸石あき
Aki Toishi

1991年生、シカゴと東京で育つ。一級建築士。
2017年東京藝術大学大学院建築専攻金田充弘研究室修了。2019年スキーマ建築計画を経て独立しlemnaとして活動を開始。自身でも工房を持つフランスの設計事務所Ciguë、東京藝術大学大学院 映像研究科 教育研究助手、東京藝術大学芸術情報センターラボでの勤務を経験し、“工房”というテーマに主軸に、マテリアル/デジタルファブリケーション/ブリコラージュなどの知見を活用したデザインやコンサルティング、リサーチ活動を行う。近作に《コ本や honkbooks 神楽坂》《ヨフ「流れる窓、追い越す目」会場構成》《mille-feuille plyglass》など。
受賞歴として、International Marianne Brandt Award nominee(2019)、東京藝術大学サロン・ド・プランタン(2016)。
https://lemna.jp/

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